2.岩峰と青空に心癒やされ 代々続く農家佐藤純子さん

延岡市の野田町に茶工場を構える「むかばき山カームファーム」は、行縢町などで米と茶を作る4代続く農家。現在は3代目の佐藤純子さん(61)と、その息子で4代目となる孝輔さん(31)に引き継がれている。純子さんは結婚後、夫とともに父親の農業を引き継ぎ、田んぼ80アールと茶畑60アールで米と茶を育てていたが、約20年前に離婚。「1人では無理だろう」と考えた父親から「行縢町の農地を売るか、他人に任せるように」と言われた。

また当時は、農業は自然と闘いながらの過酷な労働であるため、「いずれ孝輔さんに引き継ぐ」というイメージもなかったという。そんな折、精神的にも疲れていた純子さんの足は、なぜか行縢山の茶畑に向いた。そして雄大にそびえ立つ岩峰と、どこまでも広がる青空を見上げた時、「なんて心地よいのだろう」と心から癒やされたという。さらに茶畑に目をやると、苗木から新芽が出ていた。「頑張ってみよう」。思いがあふれ、引き継いでいくことを心に決めた。

その後は、父親に代わって同業者の集まりに参加するようになり、農家の先輩女性や家族に支えられながら、それまでの「やらされている」という感覚から、「農業って楽しいものなんだ」と思えるようになった。屋号である「むかばき山カームファーム」の「カーム」は、「穏やかな」を意味する英語「calm」から取ったもの。あの時感じた心地よさをイメージした。

「行縢山一帯の豊かな自然を、もっと多くの人に感じてほしい」と8年前からは実家を民泊「しいの木」として運用し、観光客に茶摘みの体験を提供しているほか、地域のカフェなどと連携した新たな観光プログラムを企画中。5年前からは思いがけず孝輔さんも一緒に働くことになり、二人三脚の日々は純子さんに心と時間の余裕をもたらした。「今すごく、わくわくしている」と笑顔を見せる。