1.百聞は「一耕」にしかず 大王谷農業小学校に入学
昨年夏、スーパーの棚から米が消え、今年に入っても価格の高騰が続く。いわゆる「令和の米騒動」。政府の対応に加え、農業そのものへの注目が高まっている。「白米を食べるためにおかずを食べる」と言っても過言ではないほどの米好き。ふと、母方の実家が米を作っていたことを思い出した。幼い頃、家族で田植えや稲刈りの手伝いに行ったことを覚えている。
水を張った田の横の水路、元気に泳ぐカエル、かわいいイモリ…。記憶をたどりながら、後悔が押し寄せてきた。少しでも稲作について学んでおけばよかったと。昨今、農業は高齢化や担い手不足、異常気象、資材高騰などの問題が山積みだ。それら現状を見聞きはするも「せめて自分に必要な最低限の食糧を作ることはできないか」と考えるようになった。

しかし知識も経験も、そもそも田畑もない。そんな中、3月、日向市で農業体験を提供している「大王谷農業小学校」の本山隆太郎校長(73)が夕刊デイリー新聞社日向支社を訪れた。聞くと、約8カ月を通して農業を実践する児童、そして大人の生徒を募集しているとのこと。何とも時宜を得た話。百聞は〃一耕〃にしかず。その場で申し込んだ。
そして迎えた4月の入学式。第11期生として6人の児童、7人の大人の生徒とともに、門をたたいた。体験の場は同市梶木町。児童生徒には個人農園(4メートル×10メートル)が割り振られた。毎月第2、4土曜日が登校日。スタッフから植え方や育て方を教わり、除草、水やりなどの管理は各自で行う。早速、畑を耕してナス、ピーマン、スイカ、トウモロコシなど10種の苗を植えた。「小学生以来か」。土の匂いを嗅ぎ、謎の感傷に浸りながら作業に没頭した。「農業って楽しいかも」。かすかに芽生えた感情が、地域の農業への興味を駆り立てた。どういう思いで土と向き合い、どのような作物を作っているのか――。
